私どもが経営している会社「イージー・エンジニアリング」は、手仕事で工数がかさんでいる工程の自動化に貢献しています。冶具設計・製作から始まり、自動機の開発・設計・製作に至るまで、主に地場の製造業の企業をクライアントとしております。

 近年は3Dプリンタも駆使しておりますが、そのおかげで試作のスピードがとても速くなりました。切削でしかできない部材ももちろんありますが、3Dプリンタでつくって問題ない部材はどんどん3Dプリンタ製の部品を自動機に採用しています。

 それでは、なぜ「イージー・エンジニアリング」という社名を選んだのか。

 「イージー」とはEasyです。つまり、現場の方々の作業を楽にするという意味です。現場の方々が、手数がかかる工程から解放されて、人間にしかできない作業に専念することを企業理念としています。人手不足が進む現在、ますますその企業理念の必要性が高まっていることを肌身で実感します。

 哲学者は、古代ギリシアのアテネの黄金時代にさかのぼれば、奴隷に日々の仕事を任せて労働から解放された存在でした。哲学とは、アゴラで「正義とは何か」を論じるアテネ市民にとって必須の思考の営みでした。

 翻って、現代においてはAI(人工知能)が人間の仕事を奪うのではないか?という議論が沸騰しています。しかし、心配には及びません。なぜならば、全ての人間が労働から解放されて哲学する営みに専念できる可能性を含んでいるからです。

いきなりAIが古代ギリシアの奴隷のように人間の労働を代替できるわけではありませんし、現物を扱う製造業においてはAIが導入される道のりは迂遠なものとなるでしょう。当面は、現場にハード的に最適化された自動機などの専用機が徐々に自動化を果たしていくこととなるでしょう。徐々にビッグデータが集積されればAIが適用される領域も出てくるかもしれません。

 AIと自動機が提携する未来も想定しながら、哲学エンジニアとして、現場の方々が創造的な仕事ができるように、現場の手数のかかる工程から解放されるよう日々の仕事に取り組んでいこうと思います。現場の全ての方々が哲学する日が実現するまで、現場の工程改善に貢献していきます。